家事事件

離婚

離婚をする場合、協議離婚、調停離婚、審判及び訴訟という方法があります。
協議離婚の場合には、当事者だけで話し合って合意し、役所に離婚届を提出することによって離婚が成立します。
これに対し、当事者間の話し合いのみで結論が出ない場合には、家庭裁判所に調停を申立て、調停の場で調停委員を交じえて話し合う中で結論を出すことができますが、その調停によっても結論が出せない場合には、審判ないしは訴訟という手続の中で裁判官に結論を出してもらうことになります。もっとも審判手続は相手方より異議が出されますと効力が生じませんので利用の場面は極めて限定されます。
ちなみに、訴訟の中でも、和解という話し合いの機会を持ち、それによって結論を出すことも可能です。
そして、離婚をする際に行う金銭的請求としては、財産分与請求と慰謝料請求が基本となりますが、子供がいる場合には、親権者を定めることを求めると共に、親権者の方から他方に対して養育費の請求を行うことができます。尚、別居中のケースでは、婚姻費用分担請求が別途可能となります。
これらの金銭的請求についても、親権者の指定についても、当事者間の話し合いのみで結論が出ない場合には、調停を申立て、調停で結論が出せない場合には、審判ないしは訴訟という手続の中で裁判官に結論を出してもらうことになりますが、離婚調停の申立と同時にこれらの申立を行うことが多いでしょう。
尚、養育費を幾ら請求できるかについては、家庭裁判所において夫婦各々の収入を基にした基準が一つの目安として用いられているので、これを基準に考えていくとよいでしょう。
また、財産分与として幾ら請求できるのかについては、夫婦で形成した共有財産が幾らあるかが基準となりますが、場合によっては何が幾らあるのかがわからず、弁護士や裁判手続の中での調査を経なければならないケースもあります。
慰謝料についても、過去の審判例や裁判例の集積や裁判の判断基準等を参考にしておおよその請求額を決める方がよいでしょう。
従って、これらの請求金額の見通しをつけたい場合、あるいは、請求された金額の妥当性に疑問がある場合などには、弁護士に相談するとよいでしょう。

相続・遺産分割

~相続とは?遺産分割とは~
一般に、人が死亡すると「相続」が発生します(民法882条)。「相続」とは、被相続人、つまり亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を承継することです(同法896条)。つまり、相続は好むと好まざるとにかかわらず、人が死亡すれば自動的に生ずるものなのです。
もし、相続人が1人であれば、それ程問題は生じません。ところが、相続人が複数人いる場合は、各相続人間で相続財産をどのように分配するかのか話をまとめる必要が出てくるのです。この、「相続財産を各相続人の相続分に応じて分割し、各相続人の単独財産とすること」を、遺産分割と言います。

~どうやって遺産分割をするのでしょう?~
遺産分割は、特に定められた手続に従って行わなければならないものではなく、相続人間で話し合って決めて構いません。ただしこのような場合、「遺産分割協議書」を作成しておかないと、後日紛争が生じてしまうかもしれませんし、相続財産に不動産や銀行預貯金が含まれている時は、実際にはこの「遺産分割協議書」がないと登記名義を移転したり、預金を引き出したり出来なくなってしまいます。
次に、各相続人間で協議が整わない場合、次なるステップとして、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てることが考えられます。
この手続は、基本的に各相続人間における話し合いの延長線上にありまが、家庭裁判所の調停委員を通じて、各相続人が自分の主張を行うという点が、本人どうしで話し合う点と異なります。また、調停がまとまった場合には、家庭裁判所が調停調書を作成してくれますので、「遺産分割協議書」を当事者間で別途作成する必要がなくなります。
さらに、調停での話し合いがまとまらなかった場合は、同じく家庭裁判所に「遺産分割審判」を申立てることが考えられます。「遺産分割調停」は、上記のように話し合いの延長である以上、当事者の一人がこれを望まず、期日に出頭しない場合には、成立しません。そこでこの様な場合は、裁判所が最終的な判断を下す「審判」をする訳です。

~遺産分割はいつまでに行えばいいのでしょう?~
遺産分割は、原則的にはいつでも行うことが出来ますが、相続開始から長期間が経過してしまうと、往々にして重要な証拠が紛失したり、各相続人にも相続が開始して権利関係が複雑になったりしてしまうこと等があります。従って、出来るだけ早期に終了させておくに越したことはありません。

~財産がなければ相続・遺産分割は無関係するのでしょう?~
目立った資産はなく、逆に借金しか有していなかった身内が死亡した場合、「私には相続するものはなにもないから」といって安心していることは禁物です。
この様な場合でも、負債はいわゆる「消極財産」といって、相続の対象になる、つまり被相続人の負債も相続してしまうあるからです。典型的には、以前亡くなった両親の債権者から、後日になって突如返済を求める文書が届いた、という様なケースがあります。
そのような場合は、「相続放棄」や「限定承認」という手続を家庭裁判所に行い、対処することが考えられますが、これらの手続を行うには種々の条件を満たしていなければならないので、一度専門家の意見を聞いたほうがよろしいでしょう。

なお,「遺言」の項も相続・遺産分割と密接に関連しますので,是非参照して下さい。

遺言

遺言(いごん・ゆいごん)とは、亡くなる人が自分の死後に言い残すこと言葉ですが、法律的には、遺言者の死亡と共に一定の効果を発生させることを目的とする相手方のない単独行為、などと言われます。
人が亡くなるとその人の持っていた財産に関して相続が発生することになります。例えば、長年付き添った妻に全財産を渡したい。あるいは会社経営をされている方にとっては会社の承継者を誰にどの様に何時定めるのか、大変重要な関心事でしょう。又遺言をするという場合には、親族間に人に言えない色々な事情がある場合もありますし、遺言で「認知」をする場合もあれば、相続人を「廃除」する場合もあり得ます。
また全財産を妻に相続させるという遺言は比較的簡単な形式ですみますし、遺言執行方法も容易でしょうが、会社の承継者を定める方法は会社の株式、有限会社の社員権の相続、この場合の有価証券の発行の有無、実際の総会の招集など考えなくてはいけないことが色々出てきます。これらの目的のために、有価証券、不動産、預貯金、会員権、様々な財産を的確に表示して、誰にどの財産をどの様に帰属させるか、そして誰が遺言を実行するのかをキチンと示す必要があります。その外、遺留分減殺請求の問題、特別受益の問題、相続税の問題等も考慮しなければなりません。会社の継承者を定める方法はどのような目的で遺言をするのかご相談しながら作成する必要があります。
上記に述べている相続は基本的にその遺言に沿う形で行われます。後日の紛争を防ぐためにも、遺言を残される方が多くなってきたのが現状であると言えます。
民法の定められた遺言にはいくつかの種類がありますが、普通の形態の遺言としては、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言という3種類が規定されています。遺言はそれが効力を生ずるときには既に遺言した人は亡くなっていて、その内容について説明することが出来ないので、方式を厳格に定め、これを守らないと無効になってしまうこともあります。

① 自筆証書遺言とは、もっとも多く作成される遺言で、遺言をする人が遺言の全文、作成した日付、氏名を自分で直筆で書き(プリントアウトは認められません)、これに印を押して作成する遺言です。この遺言は全部の部分を自書することが重要で、日付、氏名、捺印のどれか一つを欠いても無効になってしまいます。印は実印でなくても構いませんが、日付をたとえば「6月吉日」などとしてしまうと作成年月日が明瞭でないということで無効と扱われてしまいます。

② 公正証書遺言とは、二人以上の証人の立会いを得て、遺言をする人が公証人に遺言の内容を伝えこれを公正証書の形で遺言書にしてもらうもので、

③ 秘密証書遺言とは、遺言の内容を書き(これは直筆でなくても構いません)、これを封筒に入れて封印し、この封筒を公証人に提出して署名をしてもらう方式の遺言です。

これらの遺言は、自分の死後にあまり争いが生じないのであれば、それほど神経質になる必要はありませんが、その内容に関しては上記のように一定の様式を守らなければならないことや、遺留分などの問題、会社継承の問題に関しては諸事情を加味する必要性が生じる場合がありますので、専門家に相談するなどして作成すると安心でしょう。

~遺言の執行~
「土地家屋はすべて妻に相続させる」というような遺言でしたら、格別、遺言執行者を選任することはありません。土地家屋の相続登記はこの遺言書だけで行うことが出来ます。しかし、数人の相続人に種々の相続財産をそれぞれ相続させるような遺言の場合は、遺言執行者を選任していないと実際にその手続きを円滑に進めることはできません。遺言書は1通ですから、遺言執行者がいないとなると、預貯金、有価証券等の名義変更手続きを順次していくだけでも相続人間の協力が一人でも得られなくなるとそこで遺言執行は頓挫してしまいます。こうしたとき、遺言者の意思だけに忠実に従って遺言を実行する遺言執行者をあらかじめ遺言で指名しておけば無用な混乱を避けることが出来ます。