横浜地裁 平成17年9月14日判決 (判例時報1927号79ページ,判例タイムズ1249号198ページ)
- 肺がんの疑いにより入院していた循環器呼吸器専門病院の医師が、患者のC型肝炎ウイルスの感染を看過し、患者が転医先病院で肝がんの悪化によって死亡した場合、専門病院への転医勧告義務違反があったとして病院側の債務不履行責任が認められた事例。
- 死亡した患者の逸失利益の算定において、C型肝炎の完全治癒率が2~3割しかなく、しかも肝細胞がんが発症した場合には稼働が困難になると予想され、平均余命まで延命し通常と同程度まで稼働しえたと認めるに足りる立証がないとして、死亡時からの就労可能期間を6年程度と認めるのが相当であるとされ、また、病院の債務不履行が医師のC型肝炎感染の事実の見落としという初歩的過誤に起因していることが慰謝料算定において考慮された事例。
- 患者の来院当時既に病態の高度な進行があり、それには患者の約30年間の飲酒量の影響があるだけではなく、その後の飲酒が死期を早めたことも否定できず、また、医師の債務不履行がなくてもC型肝炎に起因する死亡の結果自体は避けられなかったとして、患者の過失割合が4割と認められた事例。