債務整理

破産

債権者から、厳しい取立を受けていて返済の目処が立たない。毎月の収入以上に毎月の返済額が恒常的に上回る状態になって、新規借入の限界に達している。あるいは連日、返済日が来る状態になってしまってパニックに陥っている人。こういう状態になっている場合には、自己破産という選択肢があります。
自己破産とは、人生を再スタートさせようと決心した人にとっては大変力強い味方となる制度です。それは、従来の借金の支払から債務者を解放するという免責制度があるからです。勿論、自己の所有する主だった財産、特に不動産、有価証券などがある人はこれを破産管財人に提供して公正に処分することが前提です。
また資産らしいものは殆ど無い人も同時廃止決定をもらう事で免責制度の利用ができます。とにかく、真面目にこれから人生をやり直そうと考えている人にとっては、有難い制度です。
法律扶助制度の利用もできますので、借金は一人で悩まずに終止符を打つ勇気をもって相談すべきですね。

※ 経営者・事業者にとっても、社員の給料の支払いの見込みが建たない、手形が不渡になりそうだ、街金とよばれるような悪徳債権者の強行取立が予想される、銀行からの督促に応じきれないなど経営の見通しが全く立たないで、大きな混乱が予想されるときは強い味方となって、経営者を守ります。
※ 破産の裁判所への予納費用は簡易破産事件で20万円です。現在横浜地方裁判所で行われている破産事件は原則簡易破産事件として処理されていますので、多額の予納金の捻出に苦労しなくてすむようになりました。
破産の場合は、残余財産の保全と換価手続が破産管財人に一任されていますし、支払債権の順位、配当方法等が法定されています。社員の未払給与は優先債権として他の一般債権者より優先して支払われますし、担保権者は、別徐権として保護されています。又倒産直前の利己的な債権者の行動には否認権という強力な手段が破産管財人に付与されていますので、経営者自ら手続を公正に履行する姿勢があれば、倒産時の無用な混乱を回避することができます。

個人再生

今後の約定弁済はとても無理な状態だが、債務者自身はそこそこの収入はあるし、今後の債務者の工夫と債権者の大きな反対がないという見込みがあれば、民事再生という手段が考えられます。債権者にとっても破産という選択より、余程ましな配当が受けられる可能性が見込まれれば、反対はしづらくなります。
民事再生の場合、大きく分けると、個人の再生と事業者の経営再生の場合の二通りがあり、この二つの場合では手続は大きく異なります。ここでは個人再生を取り上げます。事業者の経営再生については、民事再生の説明をご覧下さい。
個人再生は、一般的な民事再生手続きよりも、小規模個人再生、給与所得者再生、更に住宅ローン特則という特徴的な手続を使った再生手続きを行う場合が多いといえます

① 小規模個人再生の場合は、3000万円以内の負債のケースで、3年以内の分割弁済が可能だということを原則とします。配当額の最低は次の通りです。

負債総額が100万円未満の場合 全額
100万~500万円以下のときは 100万円
500万~1500万円未満のとき 2割
1500万円~ 300万円

尚、住宅ローンや抵当権でカバーされている債権は別扱いとしますので、こうした債権が外に何千万円かあっても小規模個人再生の適用が受けられます。

② 給与所得再生は、負債が3000万円以内であることは同じですが、配当額の最低は、所得税等控除後の年収から最低生活費を控除した額の2年分を支払うこととされています。又給与所得再生の場合は、債権者の決議は不要となっています。

③ 住宅ローン再生の場合最大のメリットは住宅を手放さずにすむという点です。個人再生手続等と組み合わせて使うことが出来る手続です。現在は債権者に対して支払いきれる状態ではないけれど、未払元利金の支払いを返済期間等を延長して1回の支払金額を下げるなど一定の条件があれば今後の支払が可能だと言う人にとっては住宅を手放さずにすむので検討の価値が十分あります。

民事再生

事業者の民事再生は、一定の条件が整えば企業として再生する価値が十分ある場合に、適用が検討される方法です。民事再生を申し立てますと、弁済禁止、処分禁止等の保全手続が発令されますので当面の資金ショートを回避することが出来ます。又、再生開始決定がおりると債権者は、個別権利行使が出来なくなり、個々の債権者は再生債権届出をするしかなくなります。
従来の経営者の退陣は必ずしも要求されていませんが、監督委員の選任がなされるのが通常ですから、財産評定、再生債権の認否にはこうした監督員の意見、指導に従います。そして再生計画案を事業者自らが作りますが、原則として10年以内での弁済計画を提出することになります。当然弁済計画は、事業継続の見込まれ、再生債権者にとって、今破産するよりは、余程ましな債権回収が期待できるものでなくてはいけません。こうした再生計画案は、債権者集会において出席債権者の過半数で議決債権額の過半数の賛成が得られると再生計画の認可決定がおります。
この手続には、担保権者の動向をしっかり把握し、反対を受けないように注意をする必要があります。
また会社を守ってゆくには、従来の会社の経営陣の退陣を求めなくてはならない場合もあるでしょう。こうした場合は管財人が選任されて管財人が再生計画を立てることになります。さらに債権者の賛同が得られれば、簡易再生や同意再生という方法もあります。
民事再生は、息の長い仕事です。困難な状況を乗り切るには、最初に、何のために再生をするのかという点をしっかり見極め、しっかりと歩を進める着実さが求められます。

任意整理

破産手続はとりたくないが、個人再生手続の法定条件にも合致しない場合、個人再生の趣旨、あるいは公平弁済の趣旨に添って事件を解決し無ければならないケースが生じてきます。こうした場合は、任意整理という方法が選択されます。
この手続は柔軟ですが、大方の債権者の同意がなければ、円滑に進めることは出来ません。

会社整理・特別清算事件

~会社整理~ 
商法上認められている制度です。倒産処理の上では再建型の一種です。
この制度は債権者全員の同意がないと実行できないと言う点と、現在では民事再生手続がありますので、現在では利用場面が非常に限られています。

~清算・特別清算事件~
会社を解散して清算するというケースは、いろいろな場合で生じます。
同族会社などでも案外、生じることがあります。特に親がしていた事業があるが、子供たちの代ではそれぞれ別な仕事に従事して、事業は既に閉鎖しているといったケースです。こうした場合、会社所有物件がありますと、これを売却処分すること、遺産分割をすること、会社の解散と清算を同時に進める必要があります。